2027年度の高卒採用を巡る企業の意識調査が各地で発表され、地域によって採用意欲や人手不足感が異なる状況が明らかになりました。特に、東海3県では人手不足倒産が過去最多を更新するなど、人材確保の課題は深刻さを増しています。小売・飲食・サービス業の現場では、この地域ごとの動向を正確に把握し、高卒採用の戦略立案や人材定着策を強化することが急務となっています。
この記事の要点
- 2027年度の高卒採用は、全国で約4社に1社が予定しており、特に大企業で採用意欲が高い傾向にあります。
- 熊本県や東海4県では全国平均を上回る採用意欲が見られる一方、埼玉県ではやや慎重な姿勢がうかがえ、地域差が顕著です。
- 東海3県では2026年上半期の人手不足倒産が過去最多を記録し、建設業や運輸・通信業で深刻な状況が続いています。
- 店舗の人材確保には、地域ごとの採用市場を把握し、若手人材の確保と育成、そして定着支援の強化が不可欠です。
- 採用活動の早期化、魅力的な情報発信、高校との連携強化、入社後の丁寧な育成計画が成功の鍵となります。
何が起きたのか
2026年9月から10月にかけて、帝国データバンクや北洋銀行などから2027年度の高卒採用に関する企業の意識調査や、人手不足倒産の動向が相次いで発表されました。これらの調査からは、全国的に若手人材確保への意欲が高いものの、地域や企業規模によってその温度感に差があること、そして人手不足が企業経営に与える影響が深刻化している実態が浮き彫りになっています。
| 時期 | 対象 | 内容 | 発表元 |
|---|---|---|---|
| 2026年9月25日発表 | 全国の企業(22,060社対象、10,560社回答) | 2027年度高卒採用「予定あり」24.4%。大企業42.7%、中小企業21.2%、小規模企業11.2%。採用理由「若手人材の確保」85.2%。課題は「応募者数の不足」36.4%、「企業認知度の不足」31.1%など。 | 帝国データバンク |
| 2026年10月5日発表 | 埼玉県内企業(731社対象、375社回答) | 2027年度高卒採用「予定あり」19.9%(約5社に1社)。大企業38.8%、中小企業17.2%。採用理由「若手人材の確保」86.7%。課題は「応募者数の不足」「企業認知度の不足」。 | 帝国データバンク 大宮支店 |
| 2026年10月9日発表 | 北海道内企業 | 2026年道内企業の雇用動向について発表。「新卒採用意欲に陰り 人員見通しは慎重姿勢」と報告。 | 北洋銀行 |
| 2026年10月13日発表 | 東海4県(愛知・岐阜・三重・静岡)の企業(2,493社対象、1,188社回答) | 2027年度高卒採用「予定あり」27.4%(約4社に1社)。大企業48.4%。全国平均を3.0ポイント上回る。採用理由「若手人材の確保」87.4%。課題は「応募者数、企業認知度の不足」「教育・育成の負担」「早期離職」。 | 帝国データバンク 名古屋支店 |
| 2026年10月13日発表 | 熊本県内企業(405社対象、147社回答) | 2027年度高卒採用「予定あり」35.4%(約3社に1社)。大企業63.7%。採用理由「若手人材の確保」92.3%。課題は「企業認知度、応募者数不足」「教育・育成の負担」「早期離職」。 | 帝国データバンク 熊本支店 |
| 2026年7月24日発表 | 東海3県(愛知・岐阜・三重) | 2026年上半期(1月-6月)の「人手不足倒産」は15件発生し、年半期ベースで過去最多を更新。業種別では建設業が53.3%、運輸・通信業が26.7%を占める。 | 帝国データバンク 名古屋支店 |
| 2026年6月1日以降 | 全国 | 2027年度高卒採用スケジュール:ハローワークでの求人申込書受付開始。 | 厚生労働省(参照情報) |
| 2026年7月1日以降 | 全国 | 2027年度高卒採用スケジュール:企業による学校への求人申込・学校訪問開始。 | 厚生労働省(参照情報) |
| 2026年9月5日以降(沖縄県は8月30日以降) | 全国 | 2027年度高卒採用スケジュール:学校から企業への生徒の応募書類提出開始。 | 厚生労働省(参照情報) |
| 2026年9月16日以降 | 全国 | 2027年度高卒採用スケジュール:企業による選考開始・採用内定開始。 | 厚生労働省(参照情報) |
背景:なぜ今この動きなのか
現在の高卒採用市場の動向と人手不足倒産の増加は、複数の構造的な要因が複雑に絡み合って生じています。
まず、最も根本的な背景にあるのは、少子化による若年層人口の減少です。高校卒業者数は年々減少傾向にあり、企業が採用できる絶対数が減っています。この限られたパイを多くの企業が奪い合う形になっているため、採用競争は激化の一途をたどっています。
次に、若者の大学進学志向の高まりも大きな要因です。特に埼玉県では、2026年3月卒業者の高卒就職率が9.3%と過去最低を記録し、大学等進学率が66.8%に達しています。また、県外への就職率も関東で最も高い32.4%となっており、地元企業にとっては高卒人材の確保が非常に困難な状況です。 首都圏に大学が多いことや、「大学に行くのが当たり前」という社会的な風潮が、高卒で就職を選択する若者を少数派にしています。
このような状況下で、企業は足元の深刻な人手不足に直面しています。特に小売・飲食・サービス業は、労働集約型産業であり、人手不足が直接的に売上機会の損失やサービス品質の低下に繋がりやすい特性があります。帝国データバンクの調査では、多くの企業が若手人材の確保を最優先の採用理由に挙げており、これは単なる人員補充だけでなく、将来の中核人材の育成や技能・技術の継承を見据えた中長期的な視点も含まれています。
さらに、人手不足は単なる採用難に留まらず、企業経営を揺るがす深刻な問題へと発展しています。東海3県における2026年上半期の人手不足倒産が過去最多を更新したことは、その最たる例です。 従業員の退職、採用難、人件費の高騰などが複合的に作用し、特に建設業や運輸・通信業といった特定の業種で倒産リスクが高まっています。 小売・飲食・サービス業においても、同様のリスクは決して他人事ではありません。
これらの背景から、企業は高卒採用を強化せざるを得ない状況にありますが、同時に「応募者数の不足」や「企業認知度の不足」といった課題に直面しています。 採用できたとしても、「教育・育成の負担」や「早期離職」といった入社後の定着・育成に関する課題も大きく、採用活動のプロセス全体を見直す必要性が高まっています。
店舗・企業の人事にどう影響するか
2027年度の高卒採用市場の動向は、小売・飲食・サービス業の人事担当者や店長にとって、店舗の人材確保に直結する重要な課題です。
まず、**採用競争のさらなる激化**が挙げられます。若年層人口の減少と大学進学志向の高まりにより、高卒で就職を希望する学生の数は減少傾向にあります。この限られた人材を、大企業から中小企業まで多くの企業が奪い合う状況が続くため、特に知名度や待遇面で不利になりがちな中小規模の店舗では、採用活動がより一層困難になるでしょう。全国的に見ても、大企業と中小企業では高卒採用の「予定あり」の割合に大きな差が出ており、この傾向は今後も続くと予想されます。
次に、**採用活動の長期化とコスト増**も避けられない影響です。学生や高校との接点を持つために、従来のハローワークを通じた求人だけでなく、学校訪問や職場見学の機会を増やすなど、より積極的かつ継続的なアプローチが求められます。これには、採用担当者の時間や労力、交通費などのコストがかかり、限られたリソースの中で効率的な採用活動を行う工夫が必要になります。
さらに、**採用後の育成と定着の重要性**がこれまで以上に高まります。せっかく採用した高卒人材が早期に離職してしまうことは、企業にとって大きな損失です。調査結果でも「教育・育成の負担」や「早期離職」が採用上の課題として挙げられており、入社後のOJT(On-the-Job Training)やメンター制度の充実、キャリアパスの提示、働きやすい職場環境の整備などが、人材定着の鍵となります。若手人材の育成は、将来の店舗運営を担う中核人材を確保する上でも不可欠です。
最後に、**人手不足による倒産リスクの増大**です。東海3県で人手不足倒産が過去最多を更新したように、人員が確保できないことによる事業縮小や、最悪の場合、店舗閉鎖や企業倒産に至るケースが増える可能性があります。 特に、慢性的な人手不足に悩む小売・飲食・サービス業にとって、このリスクは常に意識すべき喫緊の課題と言えるでしょう。安定した店舗運営を継続するためには、採用だけでなく、既存従業員の定着率向上にも力を入れる必要があります。
これらの影響を踏まえ、各店舗・企業は、自社の状況と地域の採用市場を深く理解し、戦略的な人材確保と定着策を講じることが求められています。
今やるべき対応
小売・飲食・サービス業の人事担当者・店長が、2027年度の高卒採用と人手不足の課題に対応するために、今から取り組むべき具体的なステップを解説します。
STEP1:地域ごとの採用市場の正確な把握
まずは、自社が展開する地域における高卒採用の現状と、人手不足の度合いを正確に把握することが重要です。全国平均だけでなく、熊本県、東海4県、埼玉県など、各地域の発表されている調査結果を参考に、自社の立地するエリアの採用意欲や課題を分析しましょう。例えば、埼玉県のように大学進学率が高く、県外就職率も高い地域では、より一層の工夫が必要になります。 また、東海3県の人手不足倒産動向のように、特定の業種で深刻な状況が報告されている場合は、自社の業種がその影響をどの程度受けるかを検討してください。
STEP2:魅力的な求人票・企業情報の作成と発信
「応募者数の不足」や「企業認知度の不足」が共通の課題として挙げられています。 これを解消するためには、高校生やその保護者、進路指導の先生に響く魅力的な求人票や企業情報を作成し、積極的に発信することが不可欠です。単に給与や休日だけでなく、仕事のやりがい、キャリアパス、職場の雰囲気、教育制度、福利厚生など、高卒人材が安心して長く働ける環境であることを具体的に伝えましょう。職場見学の機会を設けることも、企業理解を深める上で有効です。 適性検査導入の具体的な手順と失敗しないための注意点
STEP3:採用活動の早期化と高校との関係構築
2027年度の高卒採用スケジュールは、ハローワークでの求人申込書受付が2026年6月1日、学校への求人申込・学校訪問が7月1日、選考開始が9月16日と定められています。 このスケジュールを念頭に、早期から採用計画を立て、高校との関係構築に努めましょう。進路指導の先生との定期的なコミュニケーションを通じて、自社の魅力を伝え、生徒のニーズを把握することが、応募に繋がります。合同企業説明会への参加や、個別の学校訪問も積極的に行い、認知度を高める努力が必要です。
STEP4:採用後の育成・定着支援の強化
採用した高卒人材が早期に離職しないよう、入社後の育成と定着支援を強化することが重要です。新入社員研修の充実、OJT制度の明確化、メンター制度の導入などを検討しましょう。特に、社会人経験の少ない高卒者には、きめ細やかなサポートが求められます。定期的な面談を通じて、仕事の悩みやキャリアに関する相談に乗る機会を設けることも有効です。また、店舗全体で新入社員を温かく迎え入れ、成長をサポートする文化を醸成することも大切です。 離職防止に効く!従業員満足度とエンゲージメントの相関分析
対応チェックリスト
- ☐ 自社の地域における高卒採用の「予定あり」割合と課題を把握したか?
- ☐ 高卒人材に響く、具体的な仕事内容やキャリアパスを盛り込んだ求人票を作成したか?
- ☐ 高校の進路指導の先生との定期的な情報交換や学校訪問を実施しているか?
- ☐ 職場見学やインターンシップなど、高校生が企業を理解する機会を提供しているか?
- ☐ 入社後の新入社員研修やOJT制度、メンター制度を明確に設計しているか?
- ☐ 高卒人材の早期離職を防ぐための、定期的な面談や相談体制を構築しているか?
- ☐ 既存従業員を含め、働きやすい職場環境の整備に取り組んでいるか?
現場で活かすためのポイント
小売・飲食・サービス業の現場で高卒採用を成功させ、人材を定着させるためには、単なる採用活動に留まらない、店舗全体での取り組みが重要です。
まず、高卒人材の「潜在能力」に注目し、彼らが店舗で活躍できる具体的なイメージを共有することが大切です。若手社員は、新しい知識や技術を吸収する意欲が高く、デジタルネイティブ世代としてSNSを活用した情報発信や、新しいサービス提案など、店舗に新たな視点をもたらす可能性があります。彼らの強みを引き出すためには、一方的な指示だけでなく、意見を傾聴し、挑戦を後押しする姿勢が求められます。OJTでは、単なる業務手順だけでなく、顧客とのコミュニケーションの取り方や、店舗運営の全体像を理解させることで、将来の店長候補としての成長を促すことができます。
次に、店舗における「人材の見極め」と「行動特性」の理解を深めることが、採用と定着の精度を高めます。高卒採用では、社会人経験が少ないため、学力や資格だけでなく、協調性、責任感、学習意欲、顧客志向といった行動特性を重視した採用基準を設けることが有効です。採用面接では、具体的なエピソードを尋ねることで、これらの特性を見極めることができます。入社後も、個々の行動特性を理解した上で、適切な役割や教育機会を提供することで、ミスマッチを防ぎ、早期離職のリスクを低減できます。
最後に、店舗の「シフト管理」や「パート・アルバイト管理」においても、高卒人材の特性を考慮した柔軟な運用が求められます。学業との両立や、初めての社会経験であることへの配慮が必要です。例えば、テスト期間中のシフト調整や、先輩社員とのペアワークを増やすなど、安心して働ける環境を整えることが、彼らのモチベーション維持に繋がります。また、高卒社員がパート・アルバイトスタッフの育成に関わる機会を設けることで、リーダーシップを育み、店舗全体のチーム力を向上させることも期待できます。
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よくある質問
Q. 高卒採用の時期は、大学新卒採用とどのように異なりますか?
A. 高卒採用は、厚生労働省が定める全国統一のスケジュールに基づいて行われます。大学新卒採用と比較して、ハローワークを通じた企業からの求人公開、学校への求人申込、応募書類提出、選考開始、内定開始の時期が厳格に定められており、企業が自由に学生にアプローチできる期間が限られています。
Q. 中小企業が高卒採用で大企業に勝つためのポイントは何ですか?
A. 中小企業は、大企業のような知名度や待遇面で不利な場合でも、地域に根差した企業としての魅力や、アットホームな職場の雰囲気、若手でも早期に責任ある仕事を任せられるといった点をアピールできます。また、手厚い育成制度や、地域貢献への取り組みなどを具体的に伝えることで、共感を得やすくなります。
Q. 採用した高卒人材が早期に離職してしまうことを防ぐにはどうすればよいですか?
A. 早期離職を防ぐためには、入社前の期待値調整が重要です。職場見学やインターンシップを通じて、仕事のリアルな姿を伝えることで、入社後のギャップを減らせます。入社後は、OJTやメンター制度で手厚くサポートし、定期的な面談で悩みを聞き、キャリアパスを提示することで、安心感と成長実感を提供することが効果的です。 離職防止に効く!従業員満足度とエンゲージメントの相関分析
Q. 人手不足倒産のリスクを回避するために、採用以外にできることはありますか?
A. 採用だけでなく、既存従業員の定着率向上、生産性向上、業務効率化が重要です。具体的には、従業員満足度調査による課題特定と改善、福利厚生の充実、適切な人員配置とシフト管理、ITツールの導入による業務負担軽減などが挙げられます。また、シニア人材や外国人材の活用も検討の余地があります。 外国人採用を成功させるための受け入れ体制構築
まとめ
- 2027年度の高卒採用は、少子化と大学進学志向の高まりを背景に、地域間で採用意欲の差が顕著です。
- 熊本県や東海4県では高卒採用への意欲が高い一方、埼玉県では慎重な傾向が見られます。
- 東海3県では2026年上半期の人手不足倒産が過去最多を更新し、建設業や運輸・通信業で深刻化しています。
- 小売・飲食・サービス業は、若手人材の確保と定着が事業継続の生命線となります。
- 採用活動の早期化、魅力的な情報発信、高校との関係構築、入社後の丁寧な育成・定着支援が成功の鍵です。
- 店舗現場では、高卒人材の潜在能力を引き出し、行動特性を理解した上で、柔軟なシフト管理や育成計画を立てることが重要です。
人手不足が深刻化する時代において、高卒人材は店舗運営を支える貴重な戦力です。地域ごとの採用市場の特性を理解し、戦略的な採用と定着策を講じることで、持続可能な店舗経営を実現しましょう。
出典・参考情報
- 熊本県・2027年度の高卒採用に関する企業の意識調査(帝国データバンク)
- 東海4県・2027年度の高卒採用に関する企業の意識調査(帝国データバンク)
- 埼玉県・2027年度の高卒採用に関する企業の意識調査(帝国データバンク)
- 2027年度の高卒採用に関する企業の意識調査(全国)(帝国データバンク)
- 東海3県・「人手不足倒産」動向調査(2026年上半期)(帝国データバンク)
- 2027年度の高卒採用に関する企業の意識調査|株式会社 帝国データバンク[TDB]
- TDB、高卒採用の課題は応募者不足36.4%
- prtimes.jp
※本記事は2026年10月14日時点の公開情報をもとにデータコム編集部が作成したもので、個別の法的・税務的判断を示すものではありません。具体的な対応は所管官庁の資料や専門家にご確認ください。