2026年4月13日、出入国在留管理庁は特定技能「外食業」の新規受入れを原則停止しました。これは、外食業分野における特定技能1号の在留者数が、設定された受入れ上限5万人に迫ったためです。2026年7月末時点では、すでに98.6%に達しており、外食産業における外国人材の活用は、新規採用から「既存人材の定着と育成」へと大きく舵を切る新たな局面を迎えています。この変化は、店舗や企業の人事戦略にどのような影響をもたらし、私たちは今、何に取り組むべきなのでしょうか。本稿では、この重要な転換点における外食業での外国人材活用の現状と、企業が取るべき具体的な対応について解説します。
この記事の要点
- 2026年4月13日より、特定技能「外食業」の新規受入れ(在留資格認定証明書交付申請・変更許可申請)は原則停止されています。
- 2026年7月末時点で、外食業の特定技能1号在留者数は受入れ上限5万人に対し4万9,290人(充足率98.6%)に達しています。
- 新規受入れ停止により、外食業では既存の特定技能外国人材の定着と育成が喫緊の課題となっています。
- 2027年4月には「育成就労制度」が開始され、外食業に5,300人の新たな受入れ枠が設定される見込みです。
- 外国人材の定着と戦力化には、異文化理解を深め、行動特性診断などを活用した個々の特性に合わせたマネジメントが重要です。
何が起きたのか
出入国在留管理庁は、特定技能「外食業」分野において、受入れ上限に達する見込みとなったことを受け、2026年4月13日より新規の在留資格認定証明書交付申請および他の在留資格からの変更許可申請を原則として一時停止しました。この措置は、外食業分野の特定技能1号の在留者数が、設定された受入れ見込数(上限)に近づいたことによるものです。
具体的には、2026年7月末時点のデータによると、外食業の特定技能外国人は4万9,290人に達し、受入れ上限である5万人の98.6%を占めています。
この受入れ上限については、当初、2024年3月29日の閣議決定で2024年度から2028年度までの5年間で最大5万3,000人と設定されていましたが、2026年1月23日の閣議決定により、特定技能1号の外食業分野は5万人に再設定(実質的な引き下げ)されています。
今回の新規受入れ停止措置の対象外となるのは、既に外食業で特定技能1号として在留している外国人の在留期間更新許可申請と、外食業分野内での転職に伴う在留資格変更許可申請です。これらは引き続き通常通り審査が行われます。
| 時期 | 対象 | 内容 | 発表元 |
|---|---|---|---|
| 2026年1月23日 | 特定技能「外食業」受入れ上限 | 受入れ上限を5万人に再設定 | 閣議決定 |
| 2026年4月13日 | 特定技能「外食業」の新規受入れ | 在留資格認定証明書交付申請および変更許可申請を原則一時停止 | 出入国在留管理庁 |
| 2026年7月末時点 | 特定技能「外食業」在留者数 | 4万9,290人(受入れ上限5万人に対し98.6%) | 出入国在留管理庁 |
| 2027年4月(予定) | 育成就労制度 | 開始予定、外食業に5,300人の新たな受入れ枠を新設 | 閣議決定 |
背景:なぜ今この動きなのか
日本の外食産業は、長年にわたり深刻な人手不足という構造的な課題に直面してきました。店舗数の多さ、営業時間の長さ、そして景気や観光需要に左右されやすい業界特性から、安定した人材確保が困難な状況が続いています。
こうした背景のもと、2019年4月に創設されたのが在留資格「特定技能」制度です。これは、生産性向上や国内人材の確保のための取り組みを行ってもなお人材確保が困難な産業分野において、即戦力となる一定の専門性・技能を有する外国人材を受け入れることを目的としています。外食業も、この特定技能制度の対象分野の一つとして位置づけられ、飲食物の調理、接客、店舗管理など幅広い業務で外国人材の活躍が期待されてきました。
特定技能制度には、各分野ごとに「受入れ見込数」と呼ばれる上限枠が設定されています。これは、政府が産業界の需要予測に基づいて定めたもので、この枠に達した時点で新規の在留資格認定証明書の交付が停止される仕組みです。外食業分野では、この上限が5万人と設定されていましたが、外国人材の受入れが急速に進んだ結果、2026年7月末にはその98.6%に達しました。
受入れ上限の再設定も、この動きを加速させた一因です。2024年3月時点では5年間で最大5万3,000人だった外食業の受入れ見込数が、2026年1月には5万人に引き下げられました。これは、制度の運用状況や各分野の需給バランスを考慮した結果と考えられます。
今回の新規受入れ停止は、外食業における外国人材の活用が、単なる「人手補充」の段階から、いかに「持続可能な戦力」として定着・育成していくかという、より高度なフェーズに移行したことを示唆しています。特に、2027年4月には新たな外国人材受入れ制度である「育成就労制度」の開始が予定されており、外食業にも5,300人の新たな受入れ枠が新設される見込みです。 このように、外国人材の活用を取り巻く環境は常に変化しており、企業は常に最新の情報を把握し、戦略的な対応が求められています。
店舗・企業の人事にどう影響するか
特定技能「外食業」の新規受入れ停止は、外食産業の人事戦略に多岐にわたる影響を及ぼします。
まず、最も直接的な影響は、**新規の外国人材採用が極めて困難になる**点です。在留資格認定証明書の交付が原則停止されたため、海外からの新規招聘や、他の在留資格を持つ外国人を特定技能「外食業」に切り替えて採用することができなくなります。 これは、慢性的な人手不足に悩む外食企業にとって、新たな人材確保の選択肢が大幅に狭まることを意味します。
次に、**既存の特定技能外国人材の引き抜き競争が激化する**ことが予想されます。新規受入れが停止されたことで、各企業は国内に在留する限られた特定技能人材を確保しようと動きます。特に、より高い賃金や良い労働条件、キャリアアップの機会を求める外国人材は、地方から都市部への転職を検討する傾向が強まっています。 これにより、特に地方の店舗では、外国人材の確保がさらに困難になる可能性があります。
このような状況下で、企業の人事担当者や店長は、**既存の外国人材の定着率向上にこれまで以上に注力する**必要に迫られます。せっかく採用した外国人材が短期間で離職してしまうことは、採用コストの無駄だけでなく、店舗運営に大きな打撃を与えます。 労働条件の適正化、キャリアパスの明確化、良好なコミュニケーション環境の整備などが、定着率向上の鍵となります。
さらに、外国人材を単なる「労働力」としてではなく、**長期的な「戦力」として育成し、キャリアアップを支援する**視点が不可欠となります。特定技能1号の在留期間は通算5年ですが、特定技能2号への移行を目指す外国人材も少なくありません。特定技能2号は在留期間の上限がなく、家族の帯同も認められるため、永住権取得への道も開けます。 2号取得には2年間のマネジメント経験や広範な知識が求められるため、企業側がそのためのサポート体制を構築することが、優秀な人材の確保と定着につながります。
今やるべき対応
特定技能「外食業」の新規受入れ停止という状況を受け、外食業の人事担当者や店長は、以下のステップで対応を進めることが求められます。
STEP1:既存の外国人材の在留状況とキャリア志向の把握
まず、現在雇用している特定技能外国人材の在留期間、更新状況、そして将来的なキャリアプラン(特定技能2号への移行希望の有無、母国への帰国意向など)を詳細に把握することが重要です。在留期間更新は新規受入れ停止の対象外であるため、期限を確実に管理し、スムーズな更新手続きを支援することで、不法残留のリスクを防ぎ、人材の継続的な確保につなげられます。
STEP2:定着・育成計画の見直しと強化
新規採用が困難な今、既存の人材をいかに長く、そして意欲的に働いてもらうかが企業の競争力を左右します。労働条件(給与、残業時間、有給休暇取得など)が日本人と同等以上であるか再確認し、必要であれば改善を検討しましょう。 また、スキルアップの機会提供やキャリアパスの明確化は、外国人材のモチベーション向上に直結します。多言語でのスキルマップ作成や、店長・料理長などへの昇進機会の提示、資格取得支援なども有効です。
STEP3:職場環境の多文化共生への適応
外国人材が安心して働ける職場環境を整備することは、定着の土台となります。言語の壁を解消するための日本語教育支援や、多言語でのマニュアル・掲示物の作成、文化・宗教的背景への理解と配慮(ハラール食、祈りの時間など)が求められます。 また、日本人スタッフ向けの異文化理解研修を実施し、相互理解を深めることも重要です。
STEP4:新制度「育成就労制度」の情報収集と準備
2027年4月には「育成就労制度」が開始され、外食業にも5,300人の新たな受入れ枠が新設される見込みです。 この新制度は、技能実習制度に代わるもので、特定技能への円滑な移行を前提とした育成を重視しています。制度の詳細が公表され次第、積極的に情報収集を行い、自社の採用計画に組み込むための準備を進めることが賢明です。
対応チェックリスト
- ☐ 雇用している特定技能外国人材の在留期間・更新状況を確認したか
- ☐ 外国人材のキャリアプラン(特定技能2号への移行希望など)をヒアリングしたか
- ☐ 労働条件(給与、残業時間、有給休暇など)が日本人と同等以上か確認したか
- ☐ スキルアップ機会やキャリアパスを明確に提示できているか
- ☐ 日本語教育支援や多言語マニュアルの整備状況を確認したか
- ☐ 異文化理解を促進する社内研修の実施を検討したか
- ☐ 2027年4月開始予定の「育成就労制度」に関する情報収集を開始したか
現場で活かすためのポイント
外食業における外国人材の活用が「定着・育成」の局面に移行する中で、現場の採用・定着・シフト・パート/アルバイト管理、そして人材の見極めにおいて、より戦略的なアプローチが求められます。
まず、採用段階では、単に日本語能力や実務経験だけでなく、個人の「行動特性」を深く理解することが重要です。面接だけでは見えにくい、仕事への価値観、ストレス耐性、協調性、学習意欲といった内面的な特性は、入社後のパフォーマンスや定着率に大きく影響します。行動特性診断のような客観的なツールを活用することで、自社の組織文化や職務内容に合致する人材をより正確に見極め、採用後のミスマッチを防ぐことが可能になります。 多言語に対応した診断ツールも存在するため、外国人材が母国語で受検できる環境を整えることも検討に値します。
定着と育成においては、個々の行動特性に合わせたマネジメントが鍵となります。例えば、自律性が高い人材には裁量権を与え、チームワークを重視する人材には協力的な業務を多く割り振るなど、個人の強みを活かせる配置や役割を意識することが重要です。また、定期的な1on1ミーティングを通じて、仕事の進捗だけでなく、文化的な適応状況やキャリアに関する悩みを丁寧に聞き取り、適切なサポートを提供することで、エンゲージメントの向上につながります。キャリアパスを明確に示し、具体的なスキルアップの機会を提供することは、外国人材が長期的に貢献したいと感じる大きな動機となります。
シフト管理やパート/アルバイト管理においても、外国人材の特性を考慮した柔軟な対応が求められます。母国の祝日や文化的な行事への配慮、家族との時間を重視する傾向など、異文化理解に基づいたシフト作成は、従業員の満足度を高め、離職防止に貢献します。 データ活用という観点では、勤怠データやパフォーマンスデータを分析し、どのような環境やサポートがあれば外国人材がより活躍できるかを客観的に把握することも有効です。これにより、属人的な判断に頼らず、データに基づいた効果的なマネジメント施策を講じることができます。
よくある質問
Q. 新規で特定技能「外食業」の外国人を採用できますか?
A. 2026年4月13日より、特定技能「外食業」の新規受入れ(在留資格認定証明書交付申請および変更許可申請)は原則停止されています。そのため、海外からの新規招聘や、他の在留資格を持つ外国人を特定技能「外食業」に切り替えて採用することは、現時点では極めて困難です。
Q. 既存の特定技能「外食業」の外国人はどうなりますか?
A. 既に特定技能「外食業」として在留している外国人の在留期間更新許可申請は、今回の新規受入れ停止措置の対象外です。また、外食業分野内での転職に伴う在留資格変更許可申請も通常通り審査されます。既存の人材は引き続き雇用を継続できますので、在留期間の管理と更新手続きを確実に行いましょう。
Q. 地方の店舗での外国人材確保はより難しくなりますか?
A. 新規受入れ停止により、国内に在留する特定技能外国人材の獲得競争が激化しており、特に地方から都市部への転職が増加する傾向にあります。 このため、地方の店舗では外国人材の確保がさらに難しくなる可能性があります。既存人材の定着策の強化や、地域に根差した魅力的な職場づくりがより重要になります。
Q. 「育成就労制度」とは何ですか?
A. 「育成就労制度」は、2027年4月に開始予定の新たな外国人材受入れ制度で、現行の技能実習制度に代わるものです。特定技能への円滑な移行を前提とした育成を重視しており、外食業にも5,300人の新たな受入れ枠が新設される見込みです。 詳細は今後公表されますが、外国人材活用の新たな選択肢として注目されています。
まとめ
- 特定技能「外食業」の新規受入れは、受入れ上限到達により2026年4月13日から原則停止されました。
- 2026年7月末時点で、外食業の特定技能1号在留者数は受入れ上限5万人に対し98.6%に達しています。
- この停止措置は、外食産業における外国人材の活用戦略を「新規採用」から「既存人材の定着と育成」へと大きく転換させるものです。
- 企業は、既存の外国人材の在留状況を把握し、労働条件の適正化やキャリアパスの明確化を通じて定着率向上に努める必要があります。
- 多文化共生を推進する職場環境の整備や、行動特性診断を活用した個々の特性に合わせたマネジメントが、外国人材の戦力化を加速させます。
- 2027年4月開始予定の「育成就労制度」は、外食業に新たな受入れ枠を設けるため、今後の情報収集と準備が不可欠です。
外食産業が持続的に成長するためには、外国人材を長期的なパートナーとして迎え入れ、共に成長できる環境を構築することが、これまで以上に求められています。
出典・参考情報
- 行動特性診断の倫理的活用!プライバシー保護と公正な運用
- 【2026年】最低賃金引き上げ対応マニュアルと中小企業向け助成金活用
- 従業員の定着・活躍【2026年】キャリア支援と働きがい向上策
- (労働新聞社)特定技能 外食業充足率が99%達する 入管庁|にしやま行政書士事務所
- 特定技能「外食業」とは?対象業務・取得要件・外国人雇用の流れを解説 | 特定技能外国人採用ナビ
- 特定技能「外食業」受入れ停止|変更申請の受付期限と分野内転職
- 【10/7更新】一目で判る!特定技能外国人制度の受入れ見込数(上限)と受入れ充足率 | ニュース・お知らせ | JITCO - 公益財団法人 国際人材協力機構
- 外食業の外国人受け入れ停止で人手不足懸念 共生のあり方が課題に | ブリッジ・ジャパン株式会社|コーポレートサイト
※本記事は2026年10月19日時点の公開情報をもとにデータコム編集部が作成したもので、個別の法的・税務的判断を示すものではありません。具体的な対応は所管官庁の資料や専門家にご確認ください。